何でこうなるの?不信任…解散、泥沼の鹿児島・阿久根

2009年2月7日09時12分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090207-OYT1T00031.htm

 市長と議会の関係悪化で混迷が続く鹿児島県阿久根市。6日の議会による市長不信任案可決、市長による解散表明で両者の対立は決定的なものになった。

 何がここまで問題をこじれさせたのか。阿久根の動きを追い、行政と議会のあるべき姿を探った。

 ◆ブログ選挙運動で市長当選◆

 「(市長の)不信任案は可決しました」――。議長の声が響くと、議員らは足早に議場を後にした。市長に理解を示した3人を含む出席議員全15人の賛成に、傍聴席の市民も驚きを隠せない様子でざわめいた。

 竹原信一市長(49)は、可決後の記者会見で笑顔を見せながら、こう切り出した。「ありがとうございます。感謝します」。さらに、不信任の対抗手段として議会の解散を言明。「不信任案の可決を確実にするため」として、自分を理解する市議2人にさえ賛成票を投じるよう頼んだことを明らかにした。「(解散による)出直し市議選で議員を入れ替えなければならないからね」とも言い切り、解散へのシナリオを十分に描いていたことをうかがわせた。

 一方、不信任案を提出した木下孝行議員は「出直し選では私たちが過半数を取り、次は失職に追い込む」と話し、険しい表情を崩さなかった。

 ◆きっかけは議会の政務調査費不正◆

 市長と議会の対立のきっかけは、2007年1月にさかのぼる。市民団体の調査で、市議の1人が領収書を偽造し、政務調査費8万4000円を不正に受け取っていたことが発覚。さらに市監査委員の調査で、01〜05年度に11件計約36万円の不適切な使用も判明し、元議員2人を含む7人が全額返還に応じた。

 当時、市議だった竹原市長は07年9月議会に、県警が詐欺容疑などで書類送検した議員1人の辞職勧告案を提案したが、議会は否決した。また、議会の北海道視察を「税金のむだ遣い」と批判して問責決議を受けたこともあり、両者の溝は深まっていった。

 08年8月の市長選には議会改革を掲げて立候補。新人4人が乱立した選挙は、大半の市議の支援を受けた元市議会議長が有利と見られたが、告示後に潮目が変わった。

 竹原市長は自身のブログを連日更新し、他候補の批判などを展開するというこれまでにない“選挙運動”をした。市選管や県警が公職選挙法(文書図画の頒布)に抵触すると注意しても聞き入れなかった。このブログ選挙が報道されると、アクセス数は倍以上の1日約1000件に跳ね上がり、注目度が上がった。

 結局、竹原市長は次点となった元市議長に約500票差をつけて当選。反市長派の市議は「卑劣だ」「公平な選挙ではない」と怒りを募らせ、議会での厳しい追及が始まった。

 ◆定数削減案否決◆

 「阿久根はさみしかもんなぁ」。市街地を抜ける国道3号沿いで美容室を営む正林ムツ子さん(72)はため息をつく。市長選では竹原市長に1票を投じた。「阿久根を変える」との訴えに期待を寄せたからだ。

 同市の人口は2万4500人で、ピークだった1955年の3分の2に減り、高齢化率は34・3%と全国平均を約13ポイント上回る。基幹産業の農業や水産業は低迷。九州新幹線は郊外を素通りする。

 市長は就任後、公約に掲げた議会定数の10削減や、月額80万円の市長給料の半減などの条例改正案を議会に提案した。いずれも否決する議会に、正林さんは「市長が掲げる改革でもやらないと阿久根は沈んでいくだけ」と不満を口にした。

 一方、臨時議会を傍聴した同市の男性(73)は「景気回復など課題はたくさんある。市長や議会は早く安定した市に戻すべきだ」と吐き捨てるように話した。

阿久根市長の不信任可決、出席全議員賛成で

2009年2月6日 読売新聞
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090206-OYS1T00599.htm?from=ranking

 ブログ(日記形式のホームページ)を使った選挙運動などで物議を醸している鹿児島県阿久根市竹原信一市長(49)に対する不信任案が、6日開かれた臨時市議会に議員提案された。出席した15議員全員が賛成し、可決した。

 地方自治法に基づき、市長は10日以内に市議会(定数16、欠員1)を解散しなければ失職するが、市長は議会解散を選択する意向で、3月にも出直し市議選が行われる。

 昨年9月に就任した竹原市長は、市議らによる公職選挙法違反での刑事告発に発展したブログ問題をはじめ、議会定数を10減して6にする条例改正案を提案したり(議会は否決)、教育長、副市長に議会が同意しなかった人物を独断で市幹部として採用したりした。

 このため、12人の反市長派市議は「議会制民主主義を否定している」と不信任案の提案に踏み切った。

 6日午前10時に開会した臨時議会の冒頭、木下孝行議員が「阿久根市を市政史上かつてなく混乱させ、全国に阿久根市の恥をさらした」と理由を述べ、不信任案を提案した。本会議での討論で、不信任案に賛成する議員は「市民生活に直結した夢のある施策がなされていない」「市長としての職責をまっとうしていない」などと述べた。

 竹原市長は不信任案の可決後、読売新聞の取材に応じ、「議会を解散する。市民の声を反映できる議会に生まれ変わることを望む」と述べた。閉会後に記者会見し、議会解散の意向を表明する予定。

 地方自治法によると、不信任を突きつけられた市長は、議会解散か自身の失職を選択できる。議会解散を選んだ場合、出直し市議選後に再度、市長不信任案が出され、賛成が過半数に達すると、市長は自動的に失職し、出直し市長選が行われる。

 3月にも行われる出直し市議選には、竹原市長を支持する複数の新人が立候補を予定。市長派と反市長派が議席を争う激しい選挙戦になりそうだ。

阿久根市 2月6日に臨時議会 竹原市長不信任案採決へ 議員定数削減も提案

2009/01/29付 西日本新聞朝刊
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/73951

 阿久根市竹原信一市長は28日、記者会見し、2月6日に臨時市議会を招集、議員定数を現在の16から12に4削減する条例改正案を提案する意向を明らかにした。市議会側は、その臨時会で竹原市長に対する不信任決議案の審議を求める見通しで、不信任案の採決は2月6日に行われる見込みとなった。

 一方、市議会の議会運営委員会は28日、竹原市長に反発する市議グループが提出した不信任案を審議する臨時会の開催を全会一致で決めた。これを受け、京田道弘議長は同日、竹原市長に臨時会の招集を請求した。

 市議会事務局によると、非公開であった議運では特に意見もなく、臨時会開催が決まったという。京田議長から文書で臨時会招集を求められた竹原市長は「歓迎する。ぜひ(不信任案を)可決していただきたい。(その場合は)解散して議員を入れ替えたい」と話した。

 2月6日の臨時会では議員定数削減案と不信任案が付議される見通し。その場合、定数削減案と不信任案は「通常、不信任案が優先される」(議会事務局)という。

 このため、不信任案が可決されれば「不信任された市長の提案を審議する必要があるのか」との意見が出ることが予想され、定数削減案の取り扱いは不透明。ただ、竹原市長は「議会が定数案を審議しなければ否決したのと同じ」と強気な姿勢を崩さなかった。

市長不信任案を提出 阿久根

2009年1月24日 西日本新聞朝刊
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/72998

 鹿児島県阿久根市竹原信一市長(49)への不信任決議案を準備していた市議グループは23日、決議案を京田道弘議長に提出した。2月上旬にも招集される臨時市議会で可決の見通し。その場合の対応について竹原市長は同日、「解散して議員を刷新するチャンスだ」と述べ、議会解散の意向をあらためて示した。

 不信任案では、竹原市長は(1)市報で議員を誹謗(ひぼう)中傷し、市政を私物化(2)教育委員任命を議会が2回否決した人物を教育総務課長に採用したのは人事権の乱用(3)インターネットのブログ(日記風サイト)で「最も辞めてもらいたい議員は」と投票を呼び掛けるのは議員を軽視し、選挙民を冒涜(ぼうとく)‐などと指摘。議会制民主主義の否定につながると非難している。

 不信任決議案は議員数の3分の2以上が出席した上で、4分の3以上の賛成で可決される。市議15人のうち反市長派12人がそろって賛成すれば、可決される見通し。

 提出者のうち木下孝行市議は「竹原市長に市政を任せると、市民に迷惑をかける」と語った。市議会は28日に議会運営委員会を開き、臨時議会の開催を決める予定。議長が市長に招集を求めると、20日以内に議会を開かなければならない。

阿久根出直し市議選 “中立”前議員、苦悩の選挙戦

2009年2月15日 読売新聞
http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/kagoshima/20090215-OYS1T00311.htm

 3月22日投開票が決まった阿久根市の出直し市議選(定数16)は、「改革」を標榜する竹原信一市長(49)の市長派と、それを阻止しようとする反市長派が、ともに候補者の擁立を急ピッチで進めている。現在、20人以上の立候補が取りざたされ、「対決の構図」が浮き上がってきた。そんな中、竹原市長の政治理念に一定の理解を示しつつも、市長の不信任案に賛成した“中立路線”のある男性前議員が苦悩している。改選後の市長の失職をにらんだ選挙だけに、旗幟(きし)鮮明にしないと選挙戦は戦いにくい。反面、「是は是、非は非」との信念で、竹原市長と向き合ってきた姿勢は曲げられないからだ。
 ◆「市民に理解求める」

 前議員は、議会定数を10削減する条例改正案では、「地域の声を行政に反映できなくなる」と反対した。が、反市長派の反対で不同意になった教育長人事案については、「教育行政を正常化すべき」との理由で同意した。不信任案が提出された6日の臨時議会では、「行財政改革の必要性は理解するが、市民生活に直結した夢のある政策はなされていない」と、賛成する立場で討論した。

 「私は市長派でも反市長派でもない」。議会解散後の12日、険しい表情でそう語った。

 だが、現実に選挙は近づいている。支持者からは「市長派に付くべき」「反市長派の方がいい」と、両極の声が寄せられている。「このままでは、両派の間に埋没してしまうかもしれない。しかし、これまでの姿勢を市民にしっかり説明し、理解を求めていく」と語り、今のところ、中立を貫いている。
 ◆市長交代のキーマン

 出直し市議選への立候補の動きは活発化し、市長派は前議員1人と市長に理解を示す政治団体「阿想会」の推す新人5人程度、反市長派は前議員12人のうちの約10人と新人7人程度が予定している。この外にも元議員の名前が挙がっており、激戦は避けられない情勢だ。

 地方自治法によると、改選後の市議会で、2度目の不信任案が出された際、定数の3分の2以上が出席し、その過半数が賛成すれば市長は自動的に失職する。定数16の阿久根市議会では、反市長派が11議席を占めれば、「万全の状態」となる。

 ただ、改選後の議席構成によっては、市長の失職をめぐって、市長派と反市長派による前議員の1票の取り込みも予想される。キャスチングボートを握ることになりそうだが、前議員は「市議選のことで精いっぱい。選挙後のことはまだ考えられない」と心情を語った。

 市長の議会解散による今回の市議選では、市長派、反市長派の対立が際だっている。しかし、前議員の市長に対する「是々非々」のような視点を捨て置くことはできないだろう。有権者には、市長が、市議が、その資質を有しているのかどうかを見極める目が求められている。

反市長派のことを”何でもかんでも反対する人たち”であれば、下手をすると市長はも”何でもかんでも賛成する人たち”ということもできますよね。

基本的には、竹原市長の考えに賛同する者ですが、”何でもかんでも賛成する人たち”となってはいけないと思います。この記事のように、賛成反対は、個々の事案の内容によって判断すべきものと思います。このことは、国会でも同じだと思います。例えば、郵政民営化での選挙の時のように、造反したから自民党を除名(だったかな?)しちゃうなんていうのは違うのではないかと思います。一人一人の考え方はみんな違うわけですから、それを自民党だから政府提出案件にはすべて賛成しろ、っておかしくないのかな〜。大きい意味で自民党の考えに賛同するのであって、個々具体の政策については当然いろいろな考えがあるわけです。それが認められる土壌が必要なのではないのでしょうか?

といった訳で、この中立というスタンスは正解だと思います。ただ、今回の議会解散は、議会の民主化、正常化(市長と議会がべったりという意味ではなく、本来あるべき議会の姿になるという意味です)を目指すものですので、こういった竹原市長の改革を継続する機会をなくさないためにも、この中立の議員には、竹原市長が再度の不信任決議がなされないような行動をとってもらいたいです。

以下は、更新を怠っていた間の関連記事を備忘録として記録します。

「第2役場」発足 町民雇い業務委託 福島・矢祭町

朝日 2009年2月5日16時16分
http://www.asahi.com/politics/update/0204/TKY200902040318.html

 福島県矢祭町が、町の業務を大幅に委託する外部組織「第2役場」をつくり、新年度からスタートさせる。4日の町議会全員協議会で町が明らかにした。第2役場には住民票の交付といった窓口業務などを担わせ、町は政策立案など専門業務を担う。町職員を減らして人件費を圧縮する一方、第2役場には町民を積極的に雇うとしている。

 第2役場の名称は「一般社団法人やまつり公共サービス」。421ある町の業務のうち、住民票の交付や介護保険の受給者管理に関する業務など106を委託できると想定。町は条例の立案や公有財産の取得などに専念する。

 町は06年施行の自治基本条例で「団塊の世代の定年退職にも不補充で臨む」とし、現在65人の職員を50人台に減らすとしている。その一環として第2役場を検討していた。

 働く人は町民から新規採用する。4月のスタート時には元町職員らも移行し、町民数人も含め10人ほどにする予定。将来的には20人程度にし、町民も業務の中核を担う。採用する町民は嘱託を基本に継続雇用もする。

 町はこの取り組みで4年間に7600万円を節減できると試算している。

 合併特例等法の期限が迫ってきて、また全国的に合併話がにぎわしていますが、ほとんどのところが、「合併しないと市(町、村)が立ち行かなくなってしまう」としているのが気になります。
 矢祭町のように自立のための努力をしているのでしょうか?
 当社も合併しましたが、行政の体制や自治そのものがよい方向に行っているとは到底思えません。社内は縦割りが強くなってしまい、周辺地域は見捨てられがちです(一部の職員が「山間地に住んでいる人は街に出てこい。出てこないやつが悪い。山間地の行政投資の効率が悪いところにはお金をかけられない。」といっています)。
 先日もNHKで智頭町を放送していましたが、住民がしっかり自分のまちの行政に参加することが必要ですね。

阿久根市長また“裏技” 議会不同意の副市長を参事に

2009年2月3日 読売新聞
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090203-OYS1T00235.htm

 ブログ(日記形式のホームページ)を使った選挙運動などで物議を醸している鹿児島県阿久根市竹原信一市長(49)が、副市長に推しながら議会の同意を得られなかった元会社員の橋口信幸氏(57)を市農政課参事として1日付で採用したことが分かった。

 行財政改革の中心になるという。議会が不同意とした人物を市長が独断で管理職に採用したのは市教委課長に次いで2人目。識者は「民主主義の手順をすり抜ける裏技」と批判している。

 市によると、採用は市職員任用規則の「選考による採用」に該当し、採用試験や議会の同意は不要。参事は決裁権のない課長級職員という。

 市長は昨年8月、「民間からの副市長起用」などを掲げて当選。副市長に橋口氏を充てる人事案を9月議会に提案した。しかし議会は「民間出身の市長を補佐する副市長は行政経験者が相応」との理由で不同意とした。任期満了で退任した教育長ら教育委員2人の後任人事案についても「市外在住者である」などとして不同意とした。

 これに対し市長は昨年12月、議会が不同意とした元三島村教育長の長深田悟氏を市教委教育総務課長として新規採用し、教育長を兼務させた。この場合も「選考による採用」で、市の規則で教育長が空席の場合、教育総務課長が兼任できることを逆手にとった。

 反市長派がほとんどを占める市議会の反発もあり、同市の教育委員は5人中3人が不在という状態が続いている。文部科学省初等中等教育企画課は「議会の同意を得なかった人物を市教委に迎えたケースは聞いたことがない。市長や議会は教育委員の任命に努力し、早く正常な状態に戻してほしい」としている。

 阿久根市のニュースについては、よく識者の見解が載りますが、一見しただけでは識者の見解は妥当なものと受けとれますが、阿久根市は単に市長と議員がうまくいっていないのではなく、市長は議会が本来的な機能を果たしていないのを改革しようとする中でのトラブルだと思います。そして、議会を改革するには住民が変わらなくてはならない、究極的には住民を変えようとしているのだと思います。識者の方々の発言は重いですから、阿久根市の事情をいろいろ知ってから発言してもらいたいと思ってます。