旧高根町の別荘地水道料金訴訟:「横暴、認めてくれた」−−最高裁判決 /山梨

http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/yamanashi/news/20060715ddlk19040005000c.html
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060714170334.pdf

◇基本料改正前に変更へ

 別荘住民への水道料金値上げ額の設定方法は不合理−−。最高裁で14日言い渡された旧高根町(現北杜市)の給水条例の無効確認などを求めた訴訟の上告審判決は、原告が既に支払った値上げ分の返還や値上げ分の支払いを拒否した原告に債務が存在しないことを認めた。猛暑の中、傍聴に訪れた清里高原の別荘住民約45人は「市の横暴を裁判所が認めてくれた」などと判決に沸いた。市町村合併により訴訟を引き継いだ北杜市は、判決を受け入れ別荘の水道の月額基本料金を改正前に速やかに戻す考えを示した。【沢田勇】

 法廷には、清里高原の別荘住民の原告111人のうち約45人が傍聴に訪れた。主文に緊張した面持ちで耳を傾け、別荘住民の水道基本料金値上げを定めた条例の無効確認請求について「無効かどうかを確認する対象は行政処分に限られるため、訴えは不適法」と破棄を告げられると一斉に落胆した表情を見せた。

 しかし、閉廷後の記者会見で、関哲夫弁護士が、「水道料金の設定方法が不合理に行われ、改定された給水条例は地方自治法に違反しているため無効と認められた」と説明すると、原告からは「勝訴だ」と歓声が上がった。判決は、ホテルなどを含む別荘以外の一般家庭と別荘住民の水道料金の年間平均負担額を同一水準にするために、別荘に高額な基本料金を課すという市の考えには合理性がないと判断した。

 原告団代表の中村忠男さん(75)は「約8年間は長かったが、主張が認められてうれしい。今後は第二の故郷である旧高根町の人々と協力して清里の発展のために力を合わせたい」と笑顔で話した。

 関弁護士は「原告だけではなく、裁判に参加していないすべての別荘住民も平等な料金になるように速やかに条例を改正してほしい」と市に要望した。

 別荘住民の水道料金を巡っては、神奈川県箱根町三浦市でも一般家庭と月額基本料金の格差が4倍以上あるが、旧高根町の条例と異なり、水道を使用しない期間は休止し支払う必要がない制度になっている。【沢田勇】

 ◇北杜市「判決に沿い対応」

 最高裁の判決を受け、北杜市は14日午後4時半過ぎに記者会見。同市生活環境部の進藤忠衛部長が「別荘という特殊性が認められず残念だが、行政としては判決に沿って対応しなければならない」と淡々とした口調で話した。

 判決で「設定方法が不合理」と指摘された別荘所有者の月額基本料金を現在の5000円から、改正前(98年4月)の3000円に戻す方針。臨時議会も視野に早急に取り掛かる考えだ。

 原告団の中で月額5000円を払ってきた所有者約40人に対し、それぞれ月額の差額の2000円分を「不当利得」として返還する方針。原告団に加わらず5000円を払ってきた所有者に対しては、「法的な解釈を弁護士と相談して対応を決めたい」との考えを示した。清里地区には原告団以外にも約1400世帯の所有者がいて、ほとんどが5000円を払っているとみられる。

 清里地区は、東京都心から近く自然が豊かで、別荘地として特に東京都民に人気があり、給水条例改正直後の98年5月の1402世帯から、今年5月で1480世帯と別荘数は微増している。【吉見裕都】

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 《訴訟の経緯》

98年 4月 旧高根町が給水条例を改定し別荘所有者の水道料値上げ

99年 7月 値上げ分の水道料金の支払いを拒んだ別荘所有者に同町が給水
       停止を決める(結局停止せず)別荘所有者が給水停止の禁止を
       求め甲府地裁に仮処分申請8月 甲府地裁が給水停止禁止の決定

   10月 別荘所有者が給水条例の無効確認などを求め甲府地裁に提訴

01年11月 甲府地裁が別荘所有者の訴えを棄却

   12月 別荘所有者が控訴

02年10月 東京高裁が別荘所有者の訴えを認める逆転判決

   11月 同町が上告

毎日新聞 2006年7月15日