工事費減額でも反対「新駅問題」有権者100人に聞く 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/00/sga/20070209/lcl_____sga_____000.shtml

安くなっても、もったいない。JR東海に地元工事費負担金の減額を要望する案が浮上した栗東市の新幹線新駅問題。中日新聞社は県内の有権者百人に、新駅や減額案への意見を聞いた。その結果、「推進派」は一割余にとどまり、「凍結」「中止」派の九割近くは、たとえ工事費が減額されても「もったいない」と回答。アンケートの結果を見る限り、有権者は新駅を冷ややかに、減額案を冷めた目で見つめている。

 【現行の新駅計画はどうするべきですか】

 「推進」は、わずか十二人。「中止」六十三人と「凍結」二十五人が大きく上回った。

 中止、凍結の理由は「使わない」「不便」「税金がもったいない」などが大半を占めた。野洲市の工場作業員鶴谷幸篤さん(35)は「米原駅周辺は栄えておらず、栗東が栄える保証はない」と冷ややか。逆に推進派は「発展が見込める」「今さら中止こそ、もったいない」と主張した。

 地域別では、湖東は推進が23%と最も多く、凍結派は大津・湖西31%が最多。湖北では中止が88%に達した。地元の栗東市を含む湖南・甲賀地域でも推進は15%にとどまり、凍結30%、中止56%に及ばなかった。

 年代や性別をみると、六十代以上男性の35%が推進としたのに対し、六十歳未満の女性で推進と答えた人はいなかった。

 【減額に賛成か。減額なら建設に賛成か】

 推進十二人のうち、十人が「減額すべき」と回答した。特殊な工法のため、他の請願駅と比べて工事費が高いのが理由。「他駅と同じ程度にすべき」「もっとJRに負担してほしい」との意見が相次いだ。

 凍結や中止と答えた八十八人のうち、減額を条件に、推進派に転じたのは十人。「半額に」「東広島駅(広島)並みの五十億円程度で」と注文を付けた。

 大半は「安くても必要ない」「いずれにしても不便」と否定的。大津市八屋戸の画家刈谷拓爾さん(65)は「『やめるのはもったいない』という意見もあるが、無茶な計画を立てた人たちが言うのは本末転倒」と指摘した。

 【嘉田由紀子知事が減額要望に行くのは公約違反か】

 ほぼ半数の四十九人が「違反」と答えた。新駅設置促進協議会正副会長会議での合意を受け、減額要望のため、JR東海に行くことを受け入れた知事に苦言や失望の声が相次いだ。

 彦根市宇尾町の大工森居靖幸さん(27)は「中止に近い凍結という公約に期待した人を裏切る行為」とぴしゃり。湖南市菩提寺の無職男性は(70)は「トップが、ぶれていてはだめだ」と言い切る。

 「違反ではない」としたのは三十三人。大津市里の芸術家大下邦弘さん(31)は「何らかの折り合いは必要。凍結を進めてほしい」と擁護。「推進でなければ問題ない」「周囲に押されながらもがんばっている」と声が聞かれた。

 残る十八人は「分からない」と回答した。

 【駅を建設しない場合の土地利用は】

 福祉や文化、スポーツなどの「公共施設」を求める声が十八人と最多。湖南市菩提寺の主婦武田さとみさん(32)は「子どもが安全に遊ぶことができる屋内施設を」と提案した。

 「商業施設」が八人と続き、「企業や工場」誘致七人、「環境に関する施設」四人の順となった。大津市大将軍の自営業女性(46)は「どうせなら新駅とは対照的に『もったいないランド』と名付けたら」と皮肉った。

 残る四十三人は「分からない」と答えた。

 (新幹線新駅問題取材班)